一般道平均燃費 46.3km/l
上質さが際立つプレミアムVW。
PHVが加わってさらに魅力的。
フォルクスワーゲン(以下VW)のパサートは、1973年の初代B1から数えてB8、つまり8世代目に当たる。いつの時代もパサートはゴルフに対して高品質で上質であったが、VW=ゴルフというイメージがあまりにも強く、地味な存在であったことは否定できない。しかし、ひと世代前のB7あたりから、注目を集めはじめた。その大きな理由は、コンサバティブではあるがスタイリッシュなボディやダウンサイジングの先駆け的なイメージとその結果得られた高い経済性など評価されたのだ。実際、パサートは控えめではあるが上質さが際立ち、VWらしい堅実さや高品質が光るプレミアムサルーンだ。
そのPHV(プラグインハイブリット)車がパサートGTEだ。その名から想像できるように、言うまでもなくゴルフGTEに次ぐVW PHVの第2弾である。
今回試乗したのは、上級モデルのヴァリアント・アドバンスで、ナパレザーの本皮シートを標準装着、アクティブインフォディスプレイやヘッドアップディスプレイ、上からを写すアラウンドビューカメラ、パクアシスト(駐車支援システム)などに先進テクノロジーを装備する。大きな魅力はVW上級ワゴンでありながら、同クラスのライバルに対して、リーズナブルな価格設定だ。
さて、基本的なメカニズムに関しては、ゴルフGTEの流れを汲んでいるが、仔細は異なる。1.4リッターターボは150psから156psへわずかに引き上げられ、6速DSGのギアボックスとエンジンの間にセットされるモーターは、ゴルフGTEと同じ33.6kgmの最大トルクを発生するが、最高出力は109psから116psに引き上げられ、システムのトータル出力は218ps/40.8kg-mとちょっとしたスポーツモデル並みである。つまり、ゴルフGTIが230psだから、同等のパワーが与えられるGTEは、VWの場合GTの位置付けであり、エコイメージの強いPHVであってスポーツ性を備え、エコロジーの皮を被った狼なのである。
走行モードは、バッテリーで走るEVモード、エンジンとモーターを効率よく使って走るHVモード、エンジンとモーターのポテンシャルを最大限に引き出すGTEモード、チャージモードがあり、EV走行可能航続距離は57.7km(JC08モード)を達成している。
エンジンを掛けると自動的にEモードが選択される。それほど劇的ではないが十分に早く、そのまま踏み込んでいけば、時速130kmまで、バッテリーで走ることができる。当然ガソリンは使用しないが、一般道を普通に走ると実質航続距離は40kmプラスと言ったところだ。高速ではさらに短くなる。
Eモードで、バッテリーが消耗してくると、ハイブリットモードに切り替わり、エンジンが始動したり、バッテリーで走行するなど状況に応じて効率良く走ることができる。しかしエコロジーの皮を被った狼、GTの名にふさわしい走りを堪能できるのは、やはりGTEモードであろう。ステアリングがやや重くなり、アダプティブシャシーコントロール(DCC)の効果で乗り心地はスポーツライクになる。さらにスロットルレスポンスはシャープになり、DSGの変速プログラムもよりスポーティになる。ふたつの動力も速く走るために効果的に働き、パサートとは思えないほど痛快かつ小気味よいドライビングを楽しませてくれる。

Eモードはセンターコンソールのボタンを押すだけ。続けて押していくと、モニターに表示されHVモード、チャージモードへと切り替わっていく。
これだけパワフルでありながら、燃費の良さは目を見張るものがある。今回、走った総走行距離は1240km、内高速道路は約630kmで平均速度は48km/hで、平均燃費は25.3km/l、燃料はハイオクを52.92リッター使用した。基本的にはハイブリットモードで走り、一部の区間を除いて高燃費を強く意識することなく普通に走ってのデータである。高速道路での燃費は東京~名古屋間323kmをけして遅く無い平均速度93km/h、ハイブリットモードで走って18.8km/l。高速道路でのハイブリットモードは、はじめにバッテリーを使い切るのではなく、しばらくは半分ぐらいをキープして、必要に応じてモーターがアシストする。300km程度走ると最終的にはバッテリーがなくなるが、燃費が大きく悪化することは無い。ちなみに高速道路で、チャージモードで走ると1時間ちょっとで満充電になる。もちろん燃費も悪くなるがそれほどでもなく、うまく利用して燃費を稼ぐ走り方も有りだと思う。

ごく普通の一般道での走行では、トータル走行距離が12日間で596km、1日約50km程度走って平均速度が33km/h。毎晩充電して、平均燃費が46.3km/lだった。
次にいつもの区間最高燃費は、25km程度の走行距離だから当然バッテリーだけで走行可能でガソリンは使わない。興味深いのは一般道の燃費だ。もちろんEV航続距離の範囲が通勤あるいは生活圏内なら1日1回充電すればガソリンを使うことはないが、もう少し行動範囲が広がった場合を想定してみた。トータル走行距離が12日間で596km、1日約50km程度一般道を走って平均速度が33km/h。毎晩充電して、平均燃費が46.3km/lだった。これがごく普通に使った時の実力で、公表値には及ばないが、それは当然といえよう。いずれにせよ、このサイズのHVステーションワゴン/サルーンとして完成度はきわめて高く、エコなだけではなく、スポーツサルーンとしての実力も備えた魅力的な1台である。

パサートGTEパラレル式を採用。構造そのものはシンプルで、基本的にはエンジンとトランスミッションの間に配置されるモーターとセパレータークラッチで構成される厚さ15cmほどのハイブリットモジュール、エンジンルームのコントロールユニット、そしてリアのバッテリーだけである。
車名: VW PASSAT GTE Variant | ||
テストデータ | ||
データ | 備考 | |
総走行距離 | 1240km | 内高速道路約640km |
平均速度 | 48km/h | |
平均燃費 | 25.3km/l | |
高速道路平均燃費 | 18.8km/l | 東京~名古屋間約320km |
一般道平均燃費 | 46.3km/l | |
12日間毎日充電、平均速度33km/hで1日約50km程度走行。 | ||
燃料種類/使用量 | 52.92リッター | ハイオクガソリン |
区間最高燃費25km走行時 | ∞km/l | 時速90km前後で高速道路を走行 |
区間最高燃費85km走行時 | km/l | 時速90km前後で高速道路を走行 |
スペック/主要諸元 | ||
データ | 備考 | |
型式 | DLA-3CCUK | |
全長 | 4,775mm | |
全幅 | 1,830mm | |
全高 | 1,500mm | |
ホイールベース | 2,790mm | |
車両重量 | 1,770kg | |
エンジン形式 | 直列4気筒DOHC16 | ターボチャージャー |
総排気量 | 1,349cc | |
最高出力 | 115kw(156ps)/5,000-6,000rpm | |
最大トルク | 250Nm(25.5kgm)1,500-3,500rpm | |
圧縮比 | 10.0:1 | |
モーター | 85kw(116ps)/7,000rpm | |
330Nm(33.6kgm) | ||
トランスミッション | 6速AT(DSG) | |
制動装置フロント | ベンチレーテッドディスク | |
制動装置リア | ディスク | |
フロントサスペンション | マクファーソンストラット | |
リアサスペンション | 4リンク | |
最小回転半径 | 5.4m | |
定員 | 名 | |
燃料消費率(JC08モード) | 20.3km/l | |
車両本体価格(消費税込み) | ¥6,089,000 | Advance |