区間最高燃費18.5km/l
エコロジーポルシェの要。
SUVのスタンダードを変えたカイエンの電気仕掛け。
2002年に登場した初代カイエンはポルシェ初のSUVというだけでなく、その極めて高い完成度はその後のSUVに大きな影響を与え、SUVのスタンダードを大きく引き上げた。今あるプレミアムSUVは何らかの形で、カイエンの影響を受けているといっても過言ではない。
ポルシェはスポーツカーメーカーでありながらエコロジーを常に大切にしていることは良く知られている。2008年にいち早くハイブリッドモデルを送り出したカイエンはもちろんその要でもあり、2014年にはモデルチェンジとタイミングを合わせて、プラグインハイブリッドに進化したカイエンSE-ハイブリッドを送り出している。『918スパイダー』、『パナメーラSE-ハイブリッド』に続くいわゆるPHVポルシェの第3弾となるわけだが、PHVを3モデルラインナップするメーカーは当時としては稀であった。
カイエンS E-ハイブリッド・プラチナエディションは、ポルシェがプレミアムな装備を盛り込んだ特別仕様車で、内容に対して魅力的な価格が大きな特徴だ。
エクステリアは、ターボモデルのようなワイドなエクステンションホイールアーチやRSスパイダーデザインの20インチホイール、ハイグロスエクステリアパッケージでドレスアップ。インテリアについても、8ウェイの電動調節機能を組み込んだレザースポーツシート、アルカンターラ仕上げのセンターパネル、“Platinum Edition”ロゴ入りステンレススチールドアエントリーガードなどが装着される。
快適性や安全性についてもレベルアップされ、ポルシェダイナミックライトシステム(PDLS)内蔵バイキセノンヘッドライト、パワーステアリングプラス、パークアシストシステム(フロントおよびリア)が、ドアミラーとインテリアミラーの自動防眩(ぼうげん)機能、後席の濃色プライバシーガラス、オンラインナビゲーションシステム、BOSEサウンドシステムを含むポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム(PCM)など、通常は高価なオプションが標準となっている。ボディーカラーは、ブラックとホワイトのソリッドカラー仕上げが標準。このほか、ジェットブラックメタリック、パープライトメタリック、マホガニーメタリック、キャララホワイトメタリック、ロジウムシルバーメタリックの5色がオプションで用意される。
内容的にはそれまでの『カイエンSハイブリッド』の流れを汲み3.0リットルV型6気筒ガソリンエンジンを搭載。スーパーチャージャーを装着して、最大出力333psを発生する。モーターは、旧カイエンSハイブリッドの 47hpから95hpにパワー倍増。トータルで最大出力416hp/5500rpm、最大トルク60.2kgm/1250-4000rpmを引き出す。
二次電池は、蓄電容量10.8kWhのリチウムイオンバッテリー。強力なモーターを得た効果で、EVモードでは、最高速125km/hまで加速できる。このEVモードの効果もあり、欧州複合モード燃費は29.4km/リットル、CO2排出量は79g/kmと、環境性能は極めて優秀。それでいて、エンジンとモーターをフル稼働させた際には、0-100km/h加速5.9秒、最高速243km/hのパフォーマンスを発揮するから文句はない。ポルシェの名にふさわしいスポーツカーレベルのパフォーマンスも備えている。
走り出すとカイエンS E-ハイブリッドは『Eパワーモード』が自動的に選択されEV走行を開始する。スムーズにそして静かに、大柄なカイエンが加速していくフィーリングは、とても気持ち良く、紳士的でもある。そのままスロットルペダルを踏み続ければ最高速で125km/hまでその感覚が続き、理論的には最大航続距離の36km走ることができる。うまく走れば、エンジンを始動させることなく短距離の移動をこなすことができるのである。
その後、バッテリーを使い切る、あるいは意図的に走行モードを『ハイブリッドモード』やエンジンでチャージする『Eチャージモード』などを選べば、3リットルのV型6気筒スーパーチャージャーエンジンとのハイブリッド走行によって、416psのパワフルな走りを堪能できる。もちろんスポーツモデルとは違い、あくまでジェントルではあるが、ポルシェのSUVらしいパフォーマンスを見せてくれる。
今回のテスト車は、958としては後期のモデルで、熟成度が高いうえ、充実した装備も特徴的だ。。世界中の高性能SUVのベンチマークとしての高い完成度と合わせて大きな魅力である。
気になる燃費については、欧州複合モード29.4km/lという高燃費が公表されるが、欧州複合モード燃費は、市街地40 – 60km/h、郊外70 – 90km/h、高速道路120km/hという速度で計測されるもので、さらにPHVの場合は『Eパワーモード』を使用してしている。当然高燃費が期待できるわけだが、今回はあえてもう少し現実的に、『ハイブリッドモード』をメインに計測してみた。
今回走行したのは全行程で、1,783km、内高速道路を約1,065km走った。平均速度は時速59kmで、平均燃費は11.8km/hと公表値には及ばないが、このサイズのSUVとしては優秀である。内、高速道路の平均燃費は中央自動車道、瑞浪IC~甲府石和IC間163kmを『ハイブリッドモード』平均速度83km/hで13.3km/lで、これも悪くない。一般道はおおむね平均速度35km程度で、11.2km/lだが、驚かされるのは、意図的に高燃費を狙って高速道路の比較的平坦な約22km区間で計測するいつものコースで、時速約75kmで走行して、2トンを越えるSUVとは思えない18.5km/lを計測したことだ。もちろん『Eパワーモード』をもっと使えば、燃費はさらに良くなるがフルチャージで18~36km、おおむね23kmぐらいなので、電気だけで走るのは移動距離が少ない時にしたほうがメリットは大きい。要は20km程度の通勤距離で勤務先で充電できるような環境があれば、子のステイタスの高いSUVを極めてリーズナブルに乗ることができる。もちろん長距離でも期待を裏切らないのである。
充電時間に関しては、家庭用電源を使用してのゼロからのフル充電は約3.5時間程度。さらに『Eチャージモード』にすれば走りながら強制的にフル充電が可能となる。充電時間は高速道路で約1時間プラス程度の走行で満充電になるが、そのまま『Eチャージモード』で走り続けると、航続距離も少しづつ伸びていく。もちろん燃料も消費も多くなるが、『Eパワーモード』、『Eチャージモード』を繰り返し、モーターだけでの走行も可能で、状況に合わせて様々な走り方ができる。こうした高度なテクノロジーもカイエンSE-ハイブリットの魅力である。
車名:Porsche Cayenne S E-Hybrid Platinum Edition | ||
テストデータ | ||
データ | 備考 | |
総走行距離 | 1783.8km | 内高速道路
約1065km |
平均速度 | 59km/h | |
平均燃費 | 11.8km/l | |
高速道路平均燃費① | 13.3km/l | |
一般道平均燃費 | 11.2km/l | |
燃料種類/使用量 | ハイオク164リッター | |
区間最高燃費25km走行時 | 18.5km/l | 時速80km前後で高速道路をハイブリッドモードで走行 |
高速道路平均燃費② | ||
スペック/主要諸元 | ||
データ | 備考 | |
型式 | DLA-92ACGE | |
全長 | 4,855mm | |
全幅 | 1,940mm | |
全高 | 1,710mm | |
ホイールベース | 2,895mm | |
車両重量 | 2,350kg | |
エンジン形式 | V6 DOHC 24 スーパーチャージャー | |
総排気量 | 2,994cc | |
圧縮比 | 12.5:1 | |
エンジン最高出力 | 245kw(333ps)/5,500-6,500rpm | |
エンジン最大トルク | 440Nm(44.9kgm)3,000-5,250rpm | |
モーター最高出力 | 70kw(95ps)/2,200-2,600rpm | |
モーター最大トルク | 310Nm(31.6kgm)0-1,700rpm | |
システム最高出力 | 306kw(416ps)/5,500rpm | |
システム最大トルク | 590Nm(60.2kgm)1,250-4,000rpm | |
トランスミッション | 8AT | |
制動装置フロント | ベンチレーテッドディスク | |
制動装置リア | ベンチレーテッドディスク | |
フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン | |
リアサスペンション | マルチリンク | |
最小回転半径 | m | |
定員 | 5名 | |
燃料消費率(NEDC複合) | 29.4km/l | 欧州複合モード |
車両本体価格(消費税込み) | ¥12,570,000 | ¥12,763,000
(テスト車) |