プロローグ:まずは燃費向上テクノロジー
エンジン
クルマの燃費をいかに良くするか。いまや世界中の自動車メーカーやエンジニアの課題だ。様々なテクノロジーが開発され、実用化されている。その中核になるのが、リーンバーン(希薄燃焼)エンジンだ。わかりやすく言えば、通常のエンジンのガソリンと空気量が1:15程度で混合して燃焼させるのに対して、リーンバーンは高度な技術やエレクトロニクスによって、空気量が24程度でも安定した燃焼を可能にした画期的なエンジンであり、多くのメーカーが採用している。さらにシリンダーに直接燃料を噴射させるガソリン直噴エンジン、そのディーゼル版で高圧燃料を貯えるためのパイプ状のコモンレールを備え、高圧ポンプで希薄燃料を直接シリンダーに噴射するのがコモンレール式ディーゼルエンジンだ。こうした技術は、ヨーロッパのメーカーの得意とするところで、特にディーゼルは日本導入前から注目されている。これらのエンジンを簡単に言えば、高効率で、軽量コンパクト、小型でもパワフル。まさに最近のダウンサイジングや人気のヨーロッパ製ディーゼルの基本なのである。
さらに、様々な燃費向上テクノロジーのキイワードを付け加えておこう。
可変バルブタイミング
吸気バルブと排気バルブの開閉時期とそのリフト量を可変させることによって異なった運転条件における性能の変化を抑えるシステム適切なパワー屋トルクの配分が可能となり効率良く、パワーのピークが低回転域、あるいは高回転域のどちらかに偏ることなく、扱いやすく燃費のいいエンジン特性を得ることができる。現在多くにクルマがこのシステムを採用している。
アイドリングストップシステム
信号などでクルマが一時停止した際のエンジン停
止と発進時のエンジン始動を、車両側が自動で行なう。一般的に良く知られるシステムで、アイドリング中の燃料消費を抑える。
多段トランスミッション
今や乗用車向けのオートマチックトランスミッションでも10速ATが登場するなど、多段化のトレンドだ。それは遊星歯車を使ったステップATでもデュアルクラッチを前提としたDCTでも同様で、ひと昔前のATといえば3速や4速だったが、いまや6速ですら少なく感じる。当然、効率良くパワーを引き出すことが可能となり、さらにトップギアをハイギアードに設定して、高速巡航燃費を稼ぐことができる。
コースティングシステム
ヨーロッパ、特にドイツ系のオートマチックトランスミッション車に採用されるシステムで、わかりやすく言うと空走状態。マニュアルミッション車で言えば、クラッチを切ってニュートラル状態で走行するといえばわかりやすいと思う。高速巡航や下りが続くような状況、あるいは加速を必要としない場合などで、かなり効果を期待できる。もちろん、もちろんブレーキペダルやスロットルペダルに触れる程度で、適切なギアに繋がり、危険はまったく無い。
空気抵抗低減技術
クルマの走行抵抗のなかで、もっとも大きなウエイトを占めるのが空気抵抗で、もちろん燃費にも大きな影響があり、空気抵抗の軽減は燃費技術の基本である。
軽量化技術
軽い金属材料やプラスチックの使用、車体や部品の構造上のムダを省く、空洞化などにより、車両を軽量化する技術。必要な強度や剛性を確保し、走行性能や燃費を向上させる。
フリクションロス低減技術
ピストンやクランクシャフト、バルブなどが作動する際に、金属同士の摩擦や摺動によって機械的な損失を低減し、ベアリングやシールなどの改良によってロスを押さえる。
走行抵抗低減技術
クルマの走行抵抗軽減は、燃費向上の大きな要素のひとつだ。先に触れた空気抵抗軽減や軽量ボディ、さらに最近話題の転がり抵抗の少ないエコタイヤなども含めて、いかに抵抗無く滑らかに走行出来るかが重要になる。そのためにシャシーやサスペンションの設計、チューニングに至るまで、高度な技術力が要求される。
ハイブリッド
ハイブリッドカーというのは、複数の動力源を組み合わせて効率的に
走らせる自動車だが、様々な種類がある。現在主力となっているのがエンジンで発電した電力を使って電気モーターを駆動するシリーズ式、エンジンとモーターを状況に応じて使い分けるパラレル式、シリーズ式とパラレル式の特徴を合わせ持つスプリット式の3タイプ。海外での主力はパラレル式。いわゆるトヨタ方式がスプリットで、日本でも、トヨタ以外はパラレル式で、これを基本に、それぞれのメーカーは独自性を盛り込んでいる。パラレル式の構造そのものはシンプルで、基本的にはエンジンとトランスミッションの間に配置されるモーターとセパレータークラッチで構成される厚さ15cmほどのハイブリッドモジュール、エンジンルームのコントロールユニット、そしてリアのバッテリーだけである。
JC08モード
ジェイシー ゼロハチモードは、1リットルの燃料で何キロメートル走行できるかを、いくつかの自動車の走行パターンから測定する燃費測定方法の一つで、2011年4月以降の自動車に表示が義務付けられる燃費測定値だ。とはいえシャシーダイナモを使用し、好条件で測定するために、実際の走行状態に近づけているとはいえ、かなり高燃費になっている。実際に走行してこのデータにいかに近づけるかもポイントのひとつだ。
まとめ
『燃費向上研究所』を楽しんで頂くために簡単に燃費テクノロジーを解説してきたが、これらをどう組み合わせるか、どうチューニングするかがメーカーに特徴になり、燃費に影響する。それを考慮しながら様々な条件下で試乗するのが、『燃費向上研究所』の趣旨だ。新しいテクノロジーやギミックは、どんどん登場するが、必要に応じて解説を付け加えていくので楽しみにしてほしい。